レポート Vol. 32
『技術は癒し』、だから続けられる。

有限会社テストロニクス
代表取締役 荒瀬 昇さん
仕事場の窓からは目の前に丹沢の大山が見える
眺めがいいところ。
テストロニクス 代表取締役 荒瀬さんは、今年の第33回発明大賞で『
細線伸びおよびこれを用いた計測装置』を発明し、考案功労賞を受賞されました。
ちょっと難しいタイトルですが、ピアノ線など細いワイヤーの伸びやねじれ、強さを測る機械です。
細線を測定する機械はありますが、細線自体の基準値は統一されていません。細線の製造側、使用する側が独自の基準数値をもって検査しています。
荒瀬さんはそこに目をつけました。
「より正確に測ることができる測定器が普及すれば細線の基準値が決まってくる。精密な細線測定器の開発が必要」
よく使われているマイクロメーターは1000分の1mmまで計測可能。テストロニクスでは10万分の1mmまで測定できるようになりました。髪の毛はおよそ0.06mmということですから目に見えない世界です。

細線伸びおよびこれを用いた計測装置
測定器メーカーに勤めていた荒瀬さんは、さまざまな測定器を作っていました。「
"重厚長大"ばかりだったよ」。というその内容は、橋、新幹線は序の口で、
YS11、はては
掃海艇にまでかかわったそうです。
例えば新幹線は車輪の磨耗具合等を測るための測定器。これは何年ごとに車輪を交換するかを検討するため。橋なら、どのくらいの負荷までコンクリートが耐えられるかを測るための。測定器を目にすることはほとんどありませんでしたが、私たちの安全を確保する重要なものなのです。
メーカー退職後は独立し、研究開発に没頭しています。ご自身のライフワークになるほど熱中してしまう理由を聞いてみると、「技術は待っていてくれるからです。やったところまで止まっています。明日やっても前回の続きから、1週間後でも続きから始められます。待っていてくれるからうれしいし、その技術が社会に役立つかもしれない。まさに『技術は癒し』ですよ」

測る器材の1つ「マイクロメーター」
1000分の1oのマイクロメーターと10000分の1o
のリニヤセンサーを組み合わせた測定器。
細線をマイクロメーターにはさんで、クルクルとつ
まみをまわすだけで測ることができます。
今回は0.1954mmでした。
長年の経験からできた信条は、
『信頼は人生の宝である。しかし技術は疑う心に進歩と安全が確保される。』
「この言葉、結構好評なんですよ」。と笑う荒瀬さんはまだまだ進化中です。